1983年以来のコンビで、"Once On This Island" や現在公演中のヒット作 "Ragtime" 等のブロードウェイ・ミュージカルで知られる作詞家リン・アーレンズと作曲家スティーブン・フラハーティ。アメリカン・ミュージカルのリーダー的存在として高い評価を受ける二人にとって、「アナスタシア」は記念すべき映画デビュー作となった。その音楽は、デビッド・ニューマン作曲によるスコアと共にこの作品に瑞々しい生命の輝きを与えている。
アーレンズとフラハーティは、「アナスタシア」が持っていた創作上の可能性に強く魅かれたという。二人にとってこの作品は、緊迫のドラマから軽いコメディまで幅広く感情に訴える独創的な物語であった。初めて脚本を読んだ時点で、二人は既に大きく心を動かされている。「スクリーンの中で歌うキャラクターの姿さえ、目に浮かびました」とフラハーティ。「第一稿の概略を読んだだけで、最初のミュージカルのイメージが湧いてきたんです」
最初の「イメージ」は、アナスタシアのオルゴール箱が奏でる子守歌だった。「ワンス・アポン・ア・ディセンバー」のワルツ・シーンへと続く美しい曲である。これは二人が「アナスタシア」のために作った最初の曲でもあり、後に続く全ての曲の感情的な中心にして且つその牽引力となった。「映画の多くの部分が、あの曲に刺激されて生まれたんだと思います」とアーレンズ。フラハーティも「『ワンス・アポン・ア・ディセンバー』はある意味で、『アナスタシア』の感情的な核として作られたんです」と語る。
アーレンズとフラハーティの目標は、キャラクター達が会話から歌へと滑らかに移行できるように、ミュージカル・ナンバーを配置することだった。声の問題のみならず、物語の上からも歌と会話を合致させるように注意を払った二人は、更にコメディとドラマの間の流れにも気を配らねばならなかった。「バランスを保つため、二曲続けてバラードを入れるのは避けました」とアーレンズは説明する。
映画のための曲作りは、アーレンズとフラハーティにとっては大いなる挑戦であった。フラハーティが語る。「観客が思わず歌いたくなるような、単に素晴らしいだけの曲以上のものを目差しました。そのために、頭の中で振付やシーン演出を行いながらの作業になりました。何しろ視覚に訴える、動きを伴うものを創り出さなくてはならなかったんですから」
アーレンズとフラハーティは、自分達の曲作りとアーニャの自分探しの旅との間に共通点を見つけたと言う。この天涯孤独な皇女同様に、その作業プロセスで常に岐路に立たされている自分達の姿に気づいたのだ。それらを一つずつ通過していく能力こそが、二人の協力関係の礎石であった。フラハーティが言う。「曲を作っている最中は、それがどこに向かっているのか、どこで終わろうとしているのか、必ずしも明確ではありません。ただ、それがこの仕事の面白いところなんだと思います」
自分達の動機づけを明確にするためには、キャラクターの感情を理解することが不可欠だった。そこで、アーレンズとフラハーティは各キャラクターを演じてみたという(「当人達に頼むわけにもいきませんでしたからね」とアーレンズは笑う)。これは「声」のキャスティングの際にも大いに役立つことになる。「少しばかり各キャラクターの内面を知る必要があったんです」とアーレンズ。「だから自分達でラスプーチンやアーニャになってみたわけです」
監督や脚本家との緊密な協力関係は曲作りにおいて極めて重要であったが、これはアーレンズとフラハーティにとっては素晴らしい驚きだった。フラハーティが説明する。「共同作業の面白さの一つに、映画の中の本当に感動的な瞬間の多くは、一人の人間のアイディアではなくグループ全体の力で生み出されたものだということがあります。その作業の最初にあったのが私達の曲です。それぞれのキャラクターの感情の高まり -- その喜びや恐怖、そして願い -- を反映したそれらの曲を、後は監督達の手に委ねるわけです。それがどう使われたのかを確認するのは、とても楽しかったですね」
アーレンズとフラハーティの曲が次々と作り出されていくにつれて、焦点はそれを歌う人間へと移った。ブロードウェイ・ミュージカルの流れを汲むそれらの音楽に相応しく、ミュージカル・スターとしても名高い二人の名女優、アンジェラ・ランズベリーとバーナデット・ピータースがその華麗な歌声を聞かせてくれる。
「まるでミュージカル・シアターの極楽に入り込んだような気分でした」とフラハーティ。「アンジェラ・ランズベリーは60年代からのブロードウェイの大スターで、私も他の多くの子供達同様、家のステレオで彼女の歌声を聴いて育ったんです。バーナデット・ピータースも、本当にたくさんの素晴らしいミュージカルに出演してきた女優です」
ウラジミールを演じたエミー賞俳優ケルシー・グラマーは、アーレンズとフラハーティに嬉しい驚きをもたらした。グラマーはこのキャラクターの声を演じたばかりか、驚くほどの深い響きとスタイルを持った歌唱力を見せたのである。「歌うことを要求されているキャラクターなんですから、自分が歌うのは当然だと思いましたね」とグラマー。「私自身が歌わなければダメなんです。歌が本当にキャラクターの中から響いてくるように聞こえるんですよ」
「ディミトリの『ラーン・トゥ・ドゥ・イット』は、特に難しい曲でした」とフラハーティ。アーレンズが補足する。「これは三人のキャラクターの間を行き来する歌なんです。とても速くて楽しい曲なんですが、ケルシーは本当に見事でした」
ライアン、キューザック、ロイドの歌声を演じた歌手達は、その優れた才能で俳優達の科白と自分達の歌声とを滑らかに結びつけた。新進の舞台俳優ジョナサン・ドキッチュ ("The Who's Tommy," "Company") がディミトリの歌声を演じ、テレビと映画の両方で活躍するベテラン声優ジム・カミングスは、ラスプーチンのためにその歌声を披露した。そして、これら才能溢れるキャストの中心に立つのが、アナスタシアの歌声を演じたリズ・キャラウェイである。
スティーブン・ソンドハイムのミュージカル "Merrily We Roll Along" でブロードウェイにデビューを飾って以来、キャラウェイは「キャッツ」やオリジナル・キャスト(アメリカ)による「ミス・サイゴン」の舞台に立ち、今日のミュージカル・ステージを代表する主演女優として高い評価を受けている。リチャード・マルトビー/デビッド・シャイアのミュージカル "Baby" ではトニー賞候補にもなり、また歌手としても全米はもちろん世界中で公演を行っている。アニメーションの世界にも無縁ではないキャラウェイの歌声は、「美女と野獣」や「ジャファーの逆襲」(「アラジン」の続編)等の作品で聴くことができる。
キャラウェイが「アナスタシア」の世界へと足を踏み入れたのは、アーレンズとフラハーティから電話で新曲のデモ録音を依頼されたときのことだった。二人とは長年の友人でもあるキャラウェイは、依頼に応じて「ワンス・アポン・ア・ディセンバー」を録音 -- そしてアーニャは自分の歌声を見つけたのである。「皆が気に入ってくれたらしく、私はアーニャの曲を全てデモ録音することになりました。きっとプロデューサーも私の声に慣れてしまったんでしょうね」と、キャラウェイは微笑む。
アーレンズは「アナスタシア」での経験を総括して、自分達の音楽と映像が統合されていく様を、彼女とフラハーティは驚きとともに楽しんだと語る。「本当に信じられないような経験でした」とアーレンズ。「まず最初に、私達の曲を取り囲むようにして映画が組み立てられていきました。それから後はもう雪だるま式です。そして今、それ自身の生命を持った素敵な映画が目の前にあります。本当に素晴らしいと思います」
「アナスタシア」のサウンドトラック・アルバムには映画で使われた曲に加えて、現在最も注目を集めるアーティスト達による別バージョンの曲が収録されている。「ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」を歌うのは、自らも生き別れとなっていた親族との再会を果たした経験を持つアリーヤ。1997年度カントリーミュージック協会賞に輝くディアナ・カーターは主題歌「ワンス・アポン・ア・ディセンバー」を、南米のスーパースター、タリアは「ジャーニー・トゥ・ザ・パスト」のスペイン語バージョンをそれぞれ担当。また、本サウンドトラックからのファースト・シングルとなった「アット・ザ・ビギニング」(プロデュース: トレバー・ホーン)を、リチャード・マークスとドナ・ルイスが歌っている。
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