Q: 「バガー〜」でレッドフォード監督と一緒に仕事をした感想を教えてください。
  ロバート・レッドフォードはもちろんすごい俳優でしたし、現在では素晴らしい監督でもあります。彼がすばらしい俳優だったということが、今のクリエイターとしての彼を育てていると思います。そして、彼は俳優のことを“体で”理解する力を持っている人。いつも俳優に目を配って、理解力と忍耐力を示しています。俳優のやらなくてはならないプロセスをよく知っていて、とても働きやすい監督でした。彼と一緒に仕事ができることは、俳優としてラッキーだったと思います。
私は、監督としてのレッドフォードのビジョンがとても素晴らしいと感じていて、彼の作品はすべて好きです。彼は人間の感情を上手に料理し、人間性を訴えかける作品を作ります。彼は神話が好きで、彼の作品には“マジカル・タッチ”とも言うべきものがあります。神話に興味があるということは、つまり、話を物語るのが上手いということです。ストーリーテリングに優れているのです。彼は頭の回転が速く、どんな会話をしていてもとても楽しく、温かい人柄を持っています。
Q: モデルをしていた経験は、俳優業にどのように影響しているのでしょうか。
  モデルと女優業は全然違うので、モデルをやっていたことが影響することは一切ありません。確かに「セレブリティ」でスーパーモデルの役を演じたときには役に立ったかもしれないけれど。
Q: 今後はどんな作品に挑戦したいですか?
  今までの私のキャリアを見ていただければ分かると思いますが、私はいろいろな役に取り組んでいます。“昔からこの役をやりたかったから”と選ぶのではなく、シナリオを読んで、“こういう役はやったことがない”と役に触発されて決めます。だから、スーパーモデルの役をやりたい、とか社交界で有名な金持ちの令嬢をやりたいとか、そういう風には思いません。私の方針は、とにかくシナリオをたくさん読むこと。こういう人間はこういうことをするのね、というような自分自身が奮い立つような役をやっていきたいと思っています。「バガー〜」での令嬢役も「ザ・ダイバー」でのアル中の女性役も全然違った役で、とても楽しく演じることができました。

それから私は、プロデュース業もとても好きです。2年前に『インディー・フィルムス』という自分のプロダクションを設立し、プロデュース業、いわゆるシナリオを掘り起こしたりという仕事をしています。この8ヶ月は私は女優業をせずに、プロデュース業に専念していました。その仕事もとても好きです。俳優の方の中には、自分の演技が終わったらすぐ帰ってしまう人もいますが、私は製作のプロセスの段階に関わっていくことも好きなんです。
Q: 「バガー〜」の中で、マット・デイモンに迫るシーンがありましたが、実際のシャーリズさんは男性に対してどうなのでしょうか?
  インタビューでも同じ事を聞かれたわ! 私ってそんなに積極的な女性に見えますか?(笑)
アデールという女性は私が心の中で創造した女性。南部のサバンナで1930年代に生きた人です。もちろん、私はその時代を生きていません。しかし、過去の「風と共に去りぬ」のスカーレットや「偽りの花園」等の作品にもあったように、南部の女性は非常に高いプライドを持っていて、心の中でどんなに傷ついていても、表面的にはそれを隠すという特徴があります。表と裏は違うという二面性を持っているのです。映画では、ジュナとアデール2人の間にも力学的な関係が成立します。彼女は10年前に振られていて、しかもその理由も分からず、ジュナは連絡もしてくれない。ものすごく傷ついているところをカモフラージュするために、彼女は強がっています。そこが南部女性の気質であり、面白いと思ったところです。もちろん、彼女が歩んだ10年間のことは分からないけれど、誰でも人間は傷ついたことがあります。その気持ちは私も分かる。私の中からそういう気持ちを引き出して、この女性を演じました。その点でとても面白い役作りでした。
Q: 今プロデュース業にも興味があるということですが、5年後のビジョンを教えていただけますか?
  不幸なことに、私はそんなに先のことまで読めません。
それは私がブロンド女だからではなくて(笑)、意識的にそんなに先を読まないようにしているからです。あまり予測するとその先には失望がある。それを避けるためにも、今という時間をエンジョイすることにしています。私はまず俳優業に最も重きを置いています。そしてその延長上にプロデュース業があるんです。
Q: お忙しいと思いますが、あなたにとって今一番大切な時間とは?
  女優業は、実際には私の時間が他の人に属している──つまり自由な時間はほとんどありません。だから、家族や友達と過ごすプライベートな時間が一番大切になってきます。そう聞くとたいしたことないのね、と思われるかもしれませんが、でもこれだけノンストップで働いていると、その時間がとても大切なものに思えてくるんです。
Q: アル・パチーノやデ・ニーロ、マイケル・ケイン、レッドフォードなど、ベテランの共演者から学ぶことはなんですか?
  アル・パチーノやデ・ニーロという、この世界では神様のような人と共演して学んだこと、それは“経験の深さ”です。長年の経験を通して学んだことは、時間をかけないと得られないもの。彼らはマット・デイモンやウィル・スミスや私の想像を絶するような知識を、経験から知っているのです。
パリで、アル・パチーノと一緒に私が食事をしようとしたことがありました。レストランに着くまで、多くのパパラッチが追いかけてきました。それは、当時21歳でキャリアがスタートしたばかりの私にとっては悪夢のような経験でした。21歳の私が、神様のようなアル・パチーノと食事をするのは夢のようなことです。けれども、若い私に彼は「もし僕が、俳優がこんなにパパラッチに追いかけられる仕事だったとしたら俳優にならなかったかもしれない」と恐ろしいことを言ったんです。これは、経験がないと言えない台詞です。こういう人たちは、若い私たちには計り知れない知識を経験から持っているのだ、ということを実感しました。でも彼は、演技をすることが何よりも好きで、何事にも替え難く、このような多くのマイナス要因にも拘わらず俳優業を続けてきました。そうして彼は現在の知識、人間を見つめる目の鋭さを身につけてきました。そして私は彼の言葉から、許された僅かなプライベートの時間がいかに重要かを学びました。私もプライベートな時間を死守しなければならないと思ったんです。
ベテランの俳優たちは、実際に道を通った彼らにしか分からないことを教えてくれます。
Q: それでは、マット・デイモンやウィル・スミスなど若手の共演者から学ぶことはありますか?
  彼らは2人とも才能があり、素晴らしい仕事をしているという面で共通しています。彼らは、未来のデ・ニーロやアル・パチーノになる素質を持っている人たちでしょう。私の周りには若い人たちがたくさんいますが、その中でもトップにいる人たちです。
そんな彼らと一緒に仕事をして学ぶことは、いつもチャレンジしているというその姿勢です。彼らのレベルについていくために、私もつま先立ちになって必死についていかないと追いつけないことは、とてもエキサイティングです。彼らは冒険を恐れずチャレンジするし、作品の選び方もよい。非常に興味深い俳優です。
Q: 「バガー〜」で、ジュナは自分のスイングを失います。誰しもそんな経験があると思いますが、セロンさんはどうやってそのような時を乗り越えてきましたか? また、バガーのように影響力のある人に出会ったことはありますか?
  この映画のメッセージは、自分の中から失った自分を見つけ出す唯一の道は、自分の中の悪魔と対決することだということです。これは決して優しいことではなく、自分の間違いや傷と直面しなければならないことです。どうして自分はそうなったのかと、見つめなければならなりません。ジュナは、自分の傷に目を伏せてなんとか生きてきたわけですが、だんだんそのようにはいかなくなってきて、最終的に彼は自分の傷と向き合い、そして新しい自分、失わされた自分と出会うことになります。内なる宇宙の中で自分の悪魔と対決し、それを許さないと先に進めない。この映画のもう一つのテーマは“許し”です。他人を許すというだけではなく、間違いを犯した自分を許し、平穏を見つけ、自分を受け入れる生き方をしないと、先に進むことができないのです。それしか方法はないと思います。
私の過去には、バガーのように消えてしまった人はいないけれど(笑)、人間は誰でも人生の中で自分の人生を変える人に会うことがあります。ただその時にはそれに気づかずに、何年か経って“ああ、あの時あの人はこのことを言ってくれたのだ”とやっと気づくこともあります。そういうことは、もちろん私にもありました。
Q: モデルをされていた経験から、衣裳についての意見などを出すことがありますか?
  モデルの仕事とは全然関係ありません。ご存知の通り、俳優のメイクや衣裳は、人物を描くことに非常に重要な要素ということは言うまでもなく、大きな影響力があります。
衣裳係が持ってきた衣裳をそのまま黙って着る俳優はまずいません。皆必ず自分の意見を持っている。ハリウッドには幸いなことに非常に才能のある衣裳スタッフが多いから、ほとんど彼らは完璧な衣裳を持ってきます。それでも俳優にも自分の考えているキャラクターがありますし、衣裳は役作りを組み立てていくのにとても重要です。

「ザ・ダイバー」で私が演じた役は、私の解釈では、人生に非常に希望を持っていたが叶わずにアル中になってしまった女性、50年代に映画スターになりたかった女性に違いないと思いました。その夢が叶わず、現在は海軍の妻になっている。だから彼女は、当時の映画スター、エリザベス・テイラーやモンローに憧れていた女が着るような服を着ていただろうと思いました。海軍の基地で毛皮を羽織りダイヤモンドをじゃらじゃらつけるような女性。そう考えたところから、役作りがぐんと優しくなりました。内面が外見に影響を及ぼすこともありますが、外見が内面を作ることもあるのです。「ザ・ダイバー」の場合は外見が内面を作りました。
Q: レッドフォード監督と一緒に仕事をして印象に残ったことは?
  俳優として一緒に働きやすい監督とは、自由に演技させてくれて、時々重要なポイントでガイドしてくれる人です。そういう意味で、レッドフォードはとてもすばらしい監督でした。俳優が持つフラストレーションをよく知っているのです。「バガー〜」の中で、私が演じるアデールが、ゴルフの試合中、木の陰にマット・デイモンを引っ張りこんで、今までの気持ちを吐き出すシーンがあります。私は脚本を読んで、“ああ、このシーンが10年も内に秘めていたアデールの思いを彼にぶちまける、とても大切なシーンなんだわ”と自分にプレッシャーをかけてしまいました。そしてあまりにも思いつめたために、本番になって何にも自分の中から出てこなくなってしまい、愕然としました。最初5テイクくらい撮影しましたが、うまくいきませんでした。でも監督はそういうときにどうすればいいかちゃんと分かっていた。監督によっては、うまくいくまでひたすらリテイクを重ねる人もいますが、レッドフォード監督はそういうときに押してはいけないということをきちんと知っています。私はこのとき、このシーンが重要だということで頭がいっぱいで自然体で演技をすることができませんでした。すると、彼は「みなさん5分間休憩をとりましょう。そしてあなたはトレーラーに戻って、5分間で全てこのことを忘れなさい」と私に言ったんです。そして休憩後の次の撮影では、1テイクできちんと撮れました。それが今実際に使われているシーンです。彼の理解力の深さには敬服しました。自分でもこういう風にすればいいなんて、私は知らなかったから。それだけのガイダンスをくれる監督はいませんし、俳優としてもこれ以上望むものはありません。