ロサンゼルスのニューディール・スタジオで1/5スケールのミニチュアによる素晴らしいベニスの街並みが再現された。ミニチュアの建物のうち、最大のものは高さ540cm、重さは450kg以上もあった。このミニチュアのセットは、油圧で地面から180cmに持ちあげられて作られ、油圧で下げれば、建物群が沈んでゆく効果を得ることができた。
ベニスのミニチュアのセットには、窓の下枠に鉢や植木、バルコニー、ゴンドラ、橋、溝、テーブルに椅子、ランプや窓から吊された衣類まで再現されていた。
ベニスの街のミニチュア作りとともに、ニュー・ディール・スタジオのチームは、42トンの水をたたえ、深さ30cmで51mにもわたる運河を作った。この運河は、場面の背景に利用され、“ネモービル”が運河沿いの道を疾走すると、その背後でドミノのように次々と建物が倒れてゆく特別なスタント・シーンに使われた。2台のミニチュア・カーが、この場面のために作られた。1台はラジコンで自由自在に動かせ、ヘッドライトもテールランプも点灯する型、もう1台は秒速11mで、ケーブルによって引っ張られる型で、砕かれるべニスのミニチュアのセットを抜けてハイスピードで走るシーンに使われた。
こうした複雑なミニチュア・シーンを完成させるためには、様々な工夫が必要だった。ミニチュアの撮影には、見掛けの重量感を出すため、カメラの前の物理的な動きとフィルム・スピードを、相互に補いながら撮らなければならない。より大きなミニチュアの撮影になれば、動きにスピード感を出さなければうまくいかず、さらに難しくなるのだ。