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93年に「顔に降りかかる雨」で第39回江戸川乱歩賞を受賞し、ミステリー界にデビューを飾った桐野夏生。女性作家ながら硬質でスタイリッシュな文体と骨太なストーリー構成は、各マスコミ、読者から高い評価を獲得した。99年には「柔らかな頬」でミステリーという領域を超えた濃密な人間ドラマを描き第121回直木賞を受賞し、今やエンターテインメントのみならず、現代の文壇を代表する作家となった。
しかし、この小説は現実を予見したかの如く、我々の身近でも次々と似たような事件が起こり始めた。和歌山の保険金殺人、護国寺お受験殺人、久留米の女性4人組の保険金殺人……。そのどれもがごく普通の主婦たちが引き起こした犯罪であった。平穏なはずの暮らしに、ある日ぽっかりと空いた落とし穴。それは明日、我が身に起こるかもしれない悲劇。「OUT」の物語は、俄然リアリティを増して再び注目されることとなった。リストラによる家庭崩壊、老人介護、カード破産、ドメスティック・バイオレンス、ヒロインたちが抱えるこれらの問題は、同時に現代社会を生きる人々に起こる得る問題でもあるのだ。今だからこそ、「OUT」は満を持して映画化されることとなった。 「OUT」が描くのは、犯罪そのものではない。人生の崖っぷちに立たされた女たちが絶対絶命の状況を乗り越えて、新たな人生に踏み出していく“再生と出発”の物語なのだ。時には友情で、時には金で繋がり、協力し、いがみ合いながら運命を共にする女たちの強かな生きざまが、ギリギリのスリルとユーモアの中で描かれていく。4人のバイタリティ溢れるキャラクターが、この物語を爽快な脱出(OUT)活劇に仕立てている。
4人のヒロイン演じる女優にはメジャーからインディペンデントまで、すべての日本映画を支える錚々たる顔ぶれが揃った。香取雅子を演じるのは、平山監督の「愛を乞うひと」で2世代にわたる対極の女の生きざまを2役で演じ分け、その年の映画賞を席捲した原田美枝子。吾妻ヨシエを演じるのは、「楢山節考」「うなぎ」をはじめ数々の作品で多くの映画賞を受賞し、ベテランとしての貫禄を見せる倍賞美津子。城之内邦子を演じるのは、映画、ドラマ、バラエティと幅広い活躍を続ける一方、エッセイストとしても才能を発揮する室井滋。山本弥生を演じるのは、「ひみつの花園」でのコミカルな演技で話題を集め、「ナビィの恋」を経て女優として鮮やかな成長を遂げた西田尚美。この4人のアンサンブルによって、それぞれのキャラクターがより深く掘り下げられ、女たちの集団劇としての魅力も格段と増している。 スタッフには、日本アカデミー賞最優秀賞に輝く映画界トップクラスの才能が集結した。監督を務めるのは、俊英・平山秀幸。「ザ・中学教師」では学校教育の問題、「学校の怪談」シリーズでは都市伝説と小学生のリアルな日常を描いた後、97年の「愛を乞う人」では幼児虐待というハードな題材を扱いながらも、巧みなストーリーテリング圧倒的な映像喚起力でエンターテインメントに仕上げた力量は、キネマ旬報日本映画監督賞、日本アカデミー賞最優秀作品賞、最優秀監督賞をはじめ、国内外の69もの映画賞で評価された。すでにTV版(フジテレビ)と舞台版(自転車キンクリート)が存在するこの原作に取り組む上で、平山監督は語る。「単に事件を追いかけるだけならば、ノンフィクションにはかなわない。あくまでも、大人の娯楽を目指した作品に仕上げたい」。脚本を「愛を〜」でもコンビを組み、菊島隆三賞、キネマ旬報脚本賞を受賞した鄭
義信が担当、原作のスピリッツを生かしながらも、映像ならではのダイナミズムとカタルシスを念頭に大胆な脚色を施した。鋭い人間観察でも定評のある鄭は日常のディティールに徹底的にこだわり、キャラクターの魅力を最大限に引き出している。さらに、随所に盛り込まれた笑いのエッセンスが、物語に突き抜けた開放感をもたらしている。 |